第11回 日本小児科医療対策研究会

・新しい小児慢性特定疾病制度について(東京慈恵会医科大学小児科学講座 井田博幸教授)
・小児慢性特定疾病の新たな展開と今後の課題(国立成育医療センター病院 副院長/生体防御系内科部長、臨床研究開発センター副センター長 横谷進先生)
・小児慢性特定疾病制度―看護師の立場から―(聖路加国際大学看護学部小児看護学及川郁子教授)
・小児慢性特定疾病への患者・家族側からの課題(認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク小林信明会長)...
・小児慢性特定疾病制度への期待と課題―市民の立場から―(読売新聞東京本社編集局医療部 坂上博次長)
・新たな難病対策と小児慢性特定疾病対策(江田康幸衆議院議員)
・Transdisciplinary Science for the Prevention of Preterm Birth and ItsBurden of Chronic Illness(Prof.David Stevenson)

 平成27年1月1日から施行された新しい小児慢性特定疾病事業を、医師(日本小児科学会)、看護師、患者団体(親の会)メディア、政治の立場からの講演。

医師:学会と研究班の連携と協力において、新たな制度を医学的に適切で公平なものとした。登録情報の正確性を高めるために「指定医療機関」と「指定医」制度を導入。

小慢対象者は、20歳になると支援対象外になるため、難病支援等の制度とのつながりが重要となり、今後一層の連携が期待される。
看護師:アメリカの報告では、診断のついた時から将来を見据えた移行プロセスが始まっており、両親は、子どものヘルスケアの責任を子どもの成長に合わせて子ども自身にその責任を移行していく準備を幼少期から始めなければならないとされている。我が国でも、成人移行期支援を主眼とした医師向け看護師向けガイドラインはあるものの、幼少期から成長過程に応じた支援という視点ではない。今回の新しく施行された小児慢性特定疾病事業には、自立支援事業が必須事業として組み込まれたことで、小児科看護師も対象者の年齢別支援を重要に捉えている。さらに、我が国でも、既にアメリカで活用されている、対象者である親子それぞれに、子どもの成長発達段階別支援冊子の必要性を主張する。
患者会:今回の改正は、難病新法とともに改正され国の予算が義務的予算となる画期的なものである。難病ネットと親の会でも、全てではないもののある程度の評価を出来る結果であったと考える。特に、新しく加わった自立支援事業への期待をもつ。自立支援事業の任意事業は、実施主体において慢性疾病児童地域支援協議会を設置するため、難病ネットと各親の会では、現在、この協議会に委員を派遣したいと考えて働きかけている。
メディア:新しい難病・小慢制度は、安倍政権にとって重要施策のひとつと言える。これまで、成人難病は医療、小慢は福祉の位置づけであった。それを一緒にした施策として、メディアは今後、①自己負担の負担感、②新しく追加された施策の実施状況、③支援の地域差、④自立支援員の活躍、⑤「慢性疾病児童地域支援協議会」、「指定医や指定医療機関」の活動状況や地域差の有無、⑥20歳以降のトランジション問題の解決、⑦小慢で治療法開発への拍車、⑧小慢の認知度の向上などを追跡し、円滑に行われているケースをマスコミに出すことで、全国で格差ない取り組みがされるように働きかけたい。
政治:難病医療法の医療費助成対象となるのは、いわゆる難病のうち、本邦における患者数が人口の0.1%程度に達せず、かつ客観的な診断基準が確立している疾病「指
定難病」。40年間、56疾病だった指定難病が財源を明確にすることで平成27年1月に110疾病に拡大された。さらに平成27年7月から196疾病が追加され合計306疾病が指定難病として医療費助成の対象となる。この施策は、従来からの課題であった小児期から成人期への切れ目ない支援、「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」が含まれる。国としては、難病患者に対する支援は、指定難病は一定の確率で発病するものとし、国民誰もが成り得る可能性があること捉え、社会で支える制度として位置付けている。
 今回の聴講で、新制度の成立の意義を深く理解することができた。特に、新しく追加された自立支援事業においては大変興味深く感じた。なぜなら、私の経験だが、小慢を申請して最初の数年は、窓口の方も親身に社会資源の利用を勧めてくれたが、小慢を5回更新するころには窓口の方は「ご苦労様でした」のみである。子どもの成長に合った新しい制度や社会資源を教えてくれるわけでもなく、私も、なんとなく社会に取り残されたような気持ちになったおぼえがある。現在、この自立支援事業は、まだ東京の数事業所のみでの実施だそうだが、今後、全国にこの事業が円滑に行われ子どもの自立にむけた発達段階別支援が受けられることを期待したい。
また、日本ゴーシェ病の会も、指定難病親の会のひとつとして、この新制度が社会に認知されるよう啓発していく立場であることを忘れない。