ゴーシェ病Ⅱ型の怜生くんが載りました
読売新聞社さん怜生くん怜生くんのご家族に感謝しています。
読売新聞 読者と記者の日曜便のコーナー
今月は1日に、うれしいニュースがありましたね。新たながん治療の道を開いた京都大特別教授の本庶佑さん(76)が今年のノーベル生理学・医学賞に輝きました。
がんの治療薬につながった偉大な業績ですが、世の中には患者数が少なく、ゆえに研究者も少なく、新薬開発が進みにくい病気もあります。
ゴーシェ病がその一つ。報告者のフランス人医師の名にちなむ難病で、重症だと呼吸障害やてんかんを起こし、命にかかわります。国内の患者数は約150人です。
実は10月1日は、各国のゴーシェ病の患者団体が、病気の啓発に定めた「世界ゴーシェ病の日」でした。「日本でも1日からインターネットに動画を流します」と連絡を頂き、登場人物に話を聞きました。
「自分だけ違う世界に飛ばされたような気持ちでした」
長男の怜生ちゃん(2)がゴーシェ病と診断された時の心境を話すのは、動画に出演した滋賀県近江八幡市の水谷裕加さん(35)。この病は症状差が大きく、定期的な酵素の点滴で日常生活を送れる人と重症で進行の速い人がいます。怜生ちゃんは後者でした。
生後5か月で入院し、昨年6月に退院できたものの、自力の食事、呼吸はできず、鼻からのチューブで栄養をとり、人工呼吸器が必要です。付きっきりで看護を続ける水谷さんは「怜生の呼吸が苦しくなると、マッサージや吸引は欠かせません」と話します。厳しい病の現実です。
一方、動画には水谷さん一家が今春、旅行した様子もあります。行き先は、難病の子と家族が支援を受けつつ休息できる奈良の施設。怜生ちゃんはアロママッサージに気持ちよさげで、娘さん(6)は久々の家族旅行に大喜びです。難病患者のいる家族にとって、社会の理解と支援がいかに大切かを感じさせます。
動画は作成元の「日本ゴーシェ病の会」のホームページで公開中です。水谷さんは出演動機をこう語りました。
「難病の子や家族が一生懸命生きていることを知る人が一人でも増えれば、社会的な支援の後押しにつながるかもしれないので」
難病患者や家族は孤立しがちです。でも決して一人ではありません。欧州のゴーシェ病の患者団体が掲げるメッセージを最後に紹介します。
〈rare but not alone〉――
患者や家族には〈少ないけど、一人じゃないよ〉という連帯感を、
社会には〈少ないけど、孤立させずに目を向けて〉との願いを込めているそうです。
(斎藤七月)
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「紙面2018年10月7日 読売新聞社」